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うたよみにあたうるしょ

歌よみに与ふる書

正岡 子規

歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年2月12日<br> 再び歌よみに与ふる書「日本附録週報」1898(明治31)年2月14日<br> 三たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年2月18日<br> 四たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年2月21日<br> 五たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年2月23日<br> 六たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年2月24日<br> 七たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年2月28日<br> 八たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年3月1日<br> 九たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年3月3日<br> 十たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年3月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,419 字 · 35 页

青空文庫

縁語に巧を弄せんよりは真率に言いながしたるがよほど上品に相見え申候。

歌というといつでも言葉の論が出るには困り候。歌では「ぼたん」とは言わず「ふかみぐさ」と詠むが正当なりとか、この詞はこうは言わず必ずこういうしきたりのものぞなど言わるる人有之候えどもそれは根本においてすでに愚考と異り居候。愚考は古人のいうた通りに言わんとするにてもなく、しきたりに倣わんとするにてもなくただ自己が美と感じたる趣味をなるべく善く分るように現すが本来の主意に御座候。ゆえに俗語を用いたる方その美感を現すに適せりと思わば雅語を捨てて俗語を用い可申、また古来のしきたりの通りに詠むことも有之候えど、それはしきたりなるがゆえにそれを守りたるにては無之、その方が美感を現すに適せるがためにこれを用いたるまでに候。古人のしきたりなど申せども、その古人は自分が新に用いたるぞ多く候べき。

牡丹と深見草との区別を申さんに生らには深見草というよりも牡丹という方が牡丹の幻影早く著く現れ申候。かつ「ぼたん」という音の方が強くして、実際の牡丹の花の大きく凜としたるところに善く副い申候。ゆえに客観的に牡丹の美を現さんとすれば牡丹と詠むが善き場合多かるべく候。