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せいぎ
正義
浜尾 四郎
「新青年」博文館、1930(昭和5)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,327 字 · 43 页
そうしてその紙幣を奪うと脱兎のようにそこをとび出したのだ。
之が、森木が検事の前ではっきり云っている事実なんだ。即ち彼は、他人の財物を得んが為に、ピストルを放ってその所有者の生命を奪ったわけになる」
衣川はここまで語ると、改めて新しいシガレットに火をつけた。
清川が塑像の如くに身動きもせず、黙ったまま、ストーヴの焔を見つめて、きき入って居る。強い風が一しきり窓ガラスをばたばたといわせて通った。
「僕が此の事件の依頼を受けたのは、Mホテルの主人の友人を知って居たからだったが、僕が関係しはじめた時は事件が予審に移ってからだった。君も知って居るだろうが、予審中は事件の内容について詳しくたずねるわけにはいかない。予審判事の取調べが終ってからはじめて僕は森木国松にもあい、事件について詳しく知る事が出来たのだ。
森木は予審廷に行ってから俄然自白を飜した。そうして今日も公判廷で陳述したような事実を述べはじめたのだ。
君はあれを傍聴して居たのだから大体、話の筋は判って居るだろうけれども、はっきり僕から話して見よう。
森木の云う所に従えば、松村子爵は彼の目前で自殺をとげたのだ。