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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
国木田独歩『武蔵野』。同一底本的分册已合并为一书。收入:忘れえぬ人々、置土産、おとずれ、河霧、郊外、小春、鹿狩り、詩想、初恋、初孫、星、まぼろし、遺言、わかれ。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,018 字 · 192 页
』いううち姿が見えなくなった。
『お菊さんて踏切の八百屋の娘だろうか。』時田は訊ねた。お梅はうなずいたぎり黙っていた。
※(始め二重括弧、1-2-54)二※(終わり二重括弧、1-2-55)
この日は近ごろ珍しいいい天気であったが、次の日は梅雨前のこととて、朝から空模様怪しく、午後はじめじめ降りだした。普通の人ならせっかくの日曜をめちゃめちゃにしてしまったと不平を並べるところだが、時田先生、全く無頓着である。机の前に端座して生徒の清書を点検したり、作文を観たり、出席簿を調べたり、倦ぶれた時はごろりとそこに寝ころんで天井をながめたりしている。
午後二時、この降るのに訪ねて来て、中二階の三段目から『時田!』と首を出したのは江藤という画家である、時田よりは四つ五つ年下の、これもどこか変物らしい顔つき、語調と体度とが時田よりも快活らしいばかり、共に青山御家人の息子で小供の時から親の代からの朋輩同士である。
時田は朱筆を投げやって仰向けになりながら、
『君先だって頼んで置いたのはできたかね。』
江藤は火鉢のそばに座って勝手に茶を飲み、とぼけた顔をして、