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わすれえぬひとびと

武蔵野

国木田 独歩

国木田独歩『武蔵野』。同一底本的分册已合并为一书。收入:忘れえぬ人々、置土産、おとずれ、河霧、郊外、小春、鹿狩り、詩想、初恋、初孫、星、まぼろし、遺言、わかれ。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,018 字 · 192 页

青空文庫

『お前さん薬が利いたじゃアないか。』

『ハハハハハ』主人は快く笑って『しかしおいらアいくら逆上せても鉄道往生はご免だ。ドラ床の中で朝まで安楽成仏としようかな。今朝の野郎なんかまだ浮かばれねエでレールの上を迷ってるだろうよ。』

『チョッ薄気味の悪イ! ねエもうこんなところは引っ越してしまいたいねエ。』女房は心細そうに言った。

『ばか言ってらア、死ぬる奴は勝手に死ぬるんだ、こっちの為じゃアねエ。踏切の八百屋で顔が売れてるのを引っ越してどこへ行くんだイ。死にたい奴はこの踏切で遠慮なしにやってくれるがいいや、方々へ触れまわしてやらア、こっちの商売道具だ。』

あくまで太い事をいって、立ち上がって便所へ行きながら、『その代わり便所の窓から念仏の一つも唱えてやらア。』

『あれだもの』女房は苦い顔をして娘と顔を見合した。娘はすこぶるまじめで黙っている。主人は便所の窓を明けたが、外面は雨でも月があるから薄光でそこらが朧に見える。窓の下はすぐ鉄道線路である。この時傘をさしたる一人の男、線路のそばに立っていたのが主人の窓をあけたので、ソッと避けて家の壁に身を寄せた。それを主人はちらと見て、