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むさしの

武蔵野

山田 美妙

「読売新聞」1887(明治20)年11~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,798 字 · 26 页

青空文庫

そこで話もたちまち途切れた。途切れたか、途切れなかッたか、風の音に呑まれて、わからないが、まずは確かに途切れたらしい。この間の応答のありさまについてまたつらつら考えれば年を取ッた方はなかなか経験に誇る体があッて、若いのはすこし謹み深いように見えた。そうでしょう、読者諸君。

その内に日は名残りなくほとんど暮れかかッて来て雲の色も薄暗く、野末もだんだんと霞んでしまうころ、変な雲が富士の裾へ腰を掛けて来た。原の広さ、天の大きさ、風の強さ、草の高さ、いずれも恐ろしいほどに苛めしくて、人家はどこかすこしも見えず、時々ははるか対方の方を馳せて行く馬の影がちらつくばかり、夕暮の淋しさはだんだんと脳を噛んで来る。「宿るところもおじゃらぬのう」「今宵は野宿するばかりじゃ」「急ごうぞ」「急ぎゃれ」これだけの応答が幾たびも試験を受けた。

「馬が走るわ。捕えて騎ろうわ。和主は好みなさらぬか」

「それ面白や。騎ろうぞや。すわやこなたへ近づくよ」

二人は馬に騎ろうと思ッて、近づく群をよく視ればこれは野馬の簇ではなくて、大変だ、敵、足利の騎馬武者だ。

「はッし、ぬかッた、気がつかなかッた。