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ぶどうむもん
武道無門
山本 周五郎
「内蔵允留守」成武堂、1942(昭和17)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,130 字 · 24 页
と思うであろうが、この臆病ではとうてい二百五十石の武士は勤まらぬ、考えるだけでもだめだ、然しこの気持はおまえには分って貰えないかも知れないな」
「よく分ります、わたくしにはよくお察しができます」
「お八重、おまえ、分って呉れるか」
「お側へまいりましてから、もう七十余日になりますもの」
それほどのことが分らなくて妻といえようか、そう云いたげなこわねだった。
「そうか、それではなにも云わぬ、どうか拙者と一緒に岡崎を立退いて呉れ、どんな事をしてもおまえに憂き目はみせぬ、此処を去って、二人に相応わしい新しい暮しを始めよう」
「はい、どのようにも、貴方さまの思召し通りにあそばして下さいませ、八重は旦那さまの妻でございます」お八重はそう云ってから、「けれど、一つだけ伺って置きたいことがございます」と静かに顔をあげて云った、「御退身あそばしたあと、どのような道へお進みあそばすお考えでございましょうか、他家へ御仕官あそばしますか、それとも武士をおやめなされますか」
「武家奉公は拙者には勤まらぬ、誰も知らぬ他国へまいって、八百屋でも魚屋でもして、気安い暮しをしたいのが望みだ」