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ぶどうむもん
武道無門
山本 周五郎
「内蔵允留守」成武堂、1942(昭和17)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,130 字 · 24 页
「どういう事でございます」
「拙者の迂濶だった、二の曲輪ですれ違うとき、河原どのについして突き当ってしまったのだ」
事実はそうでなかった。……勘兵衛は去年、江戸表で召抱えられた新参者で、力量武芸ともに抜群の男だったが、少しばかり慢心しているとみえ、岡崎へ来てからも、その傍若無人な振舞いで、家中の人々から嫌われていた。それがいつか小弥太の評判を聴いたのであろう。彼を見る度になにかかにか嘲弄する。此方は諦めきっているので、毎もそ知らぬ顔で受け流していたが、その日は初めから企んでいたとみえ、油断を覘っていきなり向うから突き当ったうえ、退っ引きさせず喧嘩にしてしまったのである。
「拙者はすぐに謝った」と小弥太はなにか呑み込みでもするような調子で続けた、「然し向うの手の方が早かった、相手が悪い、拙者はそれでも我慢していた、ところが河原どのは勘弁しないのだ、色々と雑言を吐いて辱しめるのだ、そして松応寺ヶ原へ来て果し合をしろと云うのだ、……拙者はよくよく考えてみた、けれども」
「御承知をなさいましたのですね」
「他にしようがなかった、どう考えても、ゆかぬことには、武士が立たぬように思えた、それで約束して来た」