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しね!

死ね!

豊島 与志雄

「文芸」1934(昭和9)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,979 字 · 18 页

青空文庫

怒っているようだった。

「何をしているんだ。」

私は呆れた。

「君こそ何をしていたんだ。」

彼はそれには答えないで、帽子を拾って頭にのせてから、私の方をじっと眺めた。私は軽蔑されるのを感じて、眼を伏せた。すると彼は私の腕をとって歩き出した。

「僕は面白いことを発見した。」と彼は話し初めた。「もうとてもいけないと思って、千代子にそう云うと……。」

その、もうとてもいけないというのが、私から見れば、呆れはてた考え方なのである。前に云ったように、彼は殆んど借金で生活していた。友人たちから、借りられるだけ借りた。それから高利貸から借りた。利子が払えなくなると、他の高利貸から借りた。そういう風で、今に行き詰ることは眼に見えていた。然し彼は平然としていた。も一つの「今に」が控えていた。「今に仕事をする、そして借金なんか……。」その自信が余り大きかったので、他人の借金まで引受けるようなことをした。困ってる者が相談にくると、少々の金なら出してやり、都合がつかないと、借金の連帯保証をしてやった。それが全部かぶってきても、別に嫌な顔はしなかった。自分で借りたものよりも、そうしたものの方が多かったかも知れない。