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しまでをかたる
死までを語る
直木 三十五
「話」1933(昭和8)年9月号~1934(昭和9)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 页
父が、東京へ行くなら、これを着ろと、古着で買ってきてくれた釣鐘マントの半分の奴を着ていたが、それをかぶって、停留所の中で寝る事にした。線路沿いに行くと、停留所があったが、これが何んと、昼間降りた芦屋の停留所である。
(運命だ)
と思って、砕け、裂かれた身体を横にしたが、半分のマントでは、足がつつめない。足をつつんだ方がいいだろうと、下へやると、何うして、肩の寒さは、じっとしておれるものでない。
今度は、マントを縦にして、頭から、足の先まで冠ってみたが、腰掛の板から、夜中の凍気が、しんしんと、身体を刺してくる。とうとう
(畜生、徳子、薄情者)
と、罵りつつ、それでいて、恋しさに、眠れぬ眼を、見えぬ昼間の家の方へ向けて
(そこにいるなら、徳子、おれが、こんなになっているのを見せてやろうか)
と、いうような呪、愚痴。初めて、家を明けるのであるから、親爺の小言が恐ろしいが、そんな事は、丸で考えないで、悄げ、怒り、恨み、寒がって、夜を明かした。
そして、このままこの恋は終った。期間が短かいし、徳子さんの母親が、クリスチャンで、私の趣味に合わなかったから、諦めがよかった。