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しまでをかたる

死までを語る

直木 三十五

「話」1933(昭和8)年9月号~1934(昭和9)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 页

青空文庫

「死までを語る」と題した以上、その時まで書かなくてはならぬが、まだ十年も生きられるとしたなら、私は一体何を書き、編輯者は何うしていいか?

編輯者は、私がもう死ぬだろうから、書かせてやれ、と考えて、書かせた訳であるか――人を呪うと臍二つで、今度は、私が

「こんな雑誌、早くつぶれてしまえ」

それなら、書かなくていい。

然し、先月分の本稿を「オール讀物号」の雑文と共に、夜の七時に書上げた時には、三十八度九分の発熱であった。催促にきていた本社の××女史に

「御覧なさい」

と、その検温器を見せた。××女史は

「はあ、三十八度――九分ございます」

と、平然としていたが、編輯者なんぞという奴は、命がけで書いていても、この位、面の皮の厚いもので、人を、じりじり殺していながら

「はあ」

と、すましているのだから――女房になんぞ決してするものではない。

八年六月二十八日の暑い日、私は、朝から倒れたまま、とうとう起上れなかった。その時には

(この具合だと、よく保って二三年か)

と、覚悟した。時々、注射するだけで、殆ど養生をしていない。事実出来ない。

「何うして、養生をしない」

と、誰でも聞いて下さる。