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しかばねをくうおとこ
死屍を食う男
葉山 嘉樹
「新青年」1927(昭和2)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,482 字 · 16 页
安岡の体を戦慄がかけ抜けた。が次の瞬間には、まるで深谷の身軽さが伝染しでもしたように、風のように深谷の後を追った。
深谷は、寄宿舎に属する松林の間を、忍術使いででもあるように、フワフワとしかも早く飛んでいた。
やがて、代々木の練兵場ほども広いグラウンドに出た。
これには安岡は困った。グラウンドには眼をさえぎる何物もない。曇っていて今にも降り出しそうな空ではあったが、その厚い空の底には月があった。グラウンドを追っかければ、発見されるのは決まりきったことであった。
が、風のように早い深谷を見失わないためには、腹這ってなぞ行けなかった。で、彼はとっさの間に、グラウンドに沿うて木柵によって仕切られている街道まで腹這いになって進んだ。
街道に出ると、彼は木柵を盾にして、グラウンドの灰色の景色をながめた。その時にはもう深谷の姿は見えなかった。彼は茫然として立ちつくした。なぜかならいくら風のように速い深谷であっても、神通力を持っていないかぎり、そんなに早くグラウンドを通り抜け得るはずがなかったから。
「奴も腹這いになって、障害物のない所で見張ってやがるんだな」