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しかばねをくうおとこ
死屍を食う男
葉山 嘉樹
「新青年」1927(昭和2)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,482 字 · 16 页
彼はどうして、寄宿舎に帰ったか自分でも知らなかった。
彼は、口から頬へかけて泥だらけになって昏々と死のように眠った。
朝、深谷は静かに安岡の起きるのを待っていた。
安岡は十一時ごろになって死のような眠りからよみがえった。
不思議なことには深谷も、まだ寝室にいた。
安岡が眼を覚ましたことを見ると、
「君の欠席届は僕が出しておいたよ。安岡君」と、深谷が言った。
「ありがと」安岡はしまいまで言えなかった。
「きみは、昨夜、何か見なかったかい?」と、深谷が聞いた。
「いいや。何も見なかった」安岡の語尾は消えた。
「きみの口の周りは、まるで死屍でも食ったように、泥だらけだよ。洗ったらいいだろう。どうしたんだね」
深谷が、静かに言った。
が、その顔には、鬼気があふれていた。
それっきり、安岡は病気になってしまった。その五、六日後から修学旅行であった。
深谷は修学旅行に、安岡は故郷に病を養いに帰った。
安岡は故郷のあらゆる医師の立ち会い診断でも病名が判然しなかった。臨終の枕頭の親友に彼は言った。
「僕の病源は僕だけが知っている」
こう言って、切れ切れな言葉で彼は屍を食うのを見た一場を物語った。