轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ぼしじょじょう

母子叙情

岡本 かの子

「文学界」1937(昭和12)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页

青空文庫

すると、声がだんだん曇って来て、涙を見せまいとするかの女の顔が自然とうつ向いて来た。

むす子は軽く角笛に唇を宛て、かの女を見守っていた。

女たちが代って覚束なく毬をつき習ううち、夜は白々と明けて来た。窓越しにマロニエの街路樹の影が、銀灰色の暁の街の空気から徐々に浮き出して来た。

室内の人工の灯りが徐々に流れ込んで、部屋を浸す暁の光線と中和すると、妙に精の抜けた白茶けた超現実の世界に器物や光景を彩り、人々は影を失った鉛の片のようにひらぺたく見える。

かの女は今ここに集まった男女が遊び女であれ、やくざ男であれ、自分の巴里を去った後に、むす子の名を呼びかけて呉れるものは、これ等の人々であるのを想えば、なつかしさが込み上げて来る。かの女は儚い幻影に生ける意志を注ぎ込むような必死な眼差しで、これ等の人々を見渡した。

或る夜のかの女――今夜もかの女は逸作と銀座に来てモナミのテーブルに坐っていたが、三四十分で椅子から立ち上った。

「さあ、行きましょう。外が大ぶ賑やかになりましたわ」

逸作は黙って笑いながら、かの女のだらしなく忘れて行く化粧鞄を取って後に従いて出た。