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ひかくしんわがく

比較神話学

高木 敏雄

在线阅读高木 敏雄《比較神話学(ひかくしんわがく)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,624 字 · 348 页

青空文庫

偶ま満月の影水に映じ、恰かも乾酪の浮べるが如し。狐指して曰く、これ即ち乾酪なり、速に行きて拾い来れと。狼欺かれて、之を取らんとして、溺れて死す。満月の影を指して、乾酪なりと云うこと、仏蘭西の動物説話にも、その例あり。十一世紀頃のペトルス、アルフォンススも之を知り居たり。尚一層古きタルムードの譬喩譚にも、同じこと見えたり。思うに、水中の月を促えし猿猴は、狐に欺かれて、満月の影を捉えし、狼なる可く、或は豺に欺かれし獅子、狐に欺かれし熊なる可く、換言すれば、動物説話の愚なる主人公なりしなる可し。

日本説話の猿に就ても、同様のことを云い得可し。蟹の為めに手痛く復讐せられし猿、兎に誘われて、水に溺れし狸、共に愚かなる一方の主人公にして、蟹と兎とは之に反して、共に賢き主人公なり。狸の欺かれて、水に溺れしと云う一条は、印度日耳曼動物説話の狼、熊或は獅子の、其敵に欺かれて溺れしに類似す。若し印度日耳曼動物説話の根元は、印度動物説話にして、水中の月を捉うる猿猴も、等しく之より出たる者なる可し、との想像にして、正くとすれば、日本説話の猿と狸とも亦た、同じ根元より出でたりとの想像説を立つるを得可し。