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みずとほね
水と骨
佐藤 垢石
「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,477 字 · 11 页
温かい水を好むためであろう。
だから水温の低い川へ遡らないかといえばそうでない。利根川は中部日本では、最も水温の低い川である。五月下旬から六月上旬、鮎の遡上の最も盛りだという頃、九度から十一、二度を往復している。銚子口や江戸口から、海で育った小鮎が淡水に向かう三月下旬から、四月中旬へかけては、雪解け水の出はじめた頃で、それよりも、もっとも水温が低いのである。それでさえも、小鮎は上流へ、上流へと遡っていく。
そして、遡り詰めたところは、水上温泉の下流、小松の発電所の付近である。でなければ支流の片品川の吹割の滝の下流、岩室付近である。近年、上毛電力の堰堤が糸の瀬にできて遡れなくはなったが――。この付近の水温は、七月中旬から、八月中旬にかけて真夏の日中でも二十一、二度を超えることができない。また夕方は早く水から上がらなければ、慄えてしまう。それでも鮎は大きく育つ。
この辺は、真夏山女魚も一緒に棲んでいるのである。
そんな冷たい水で育った鮎の味はというと、それは上等である。七、八十匁から、百匁近い大きな鮎であるにも拘わらず、肉はキッとしまって香気が高い。