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みずとほね
水と骨
佐藤 垢石
「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,477 字 · 11 页
殊に嬉しいことは、水が冷たくなればなるほど、鮎の骨は柔らかになる。腹に片子でも持とうという成熟しきった八月末の鮎でも骨も頭もない。モリモリと頭から食える。
だから、利根川の鮎は赤谷川の合流点付近から上流でとれたものを、一番上等とされている。鮎の産地のことなどには、あまり関心を持たない――ほんとうは、知っているべき筈なのだが――大日本料理人組合連合会の三宅孤軒君も、一昨年越後からの帰りに後閑で、キネマ界の利け者野中康弘君の友釣りでとった鮎をご馳走になって、その味と香気と肉の舌離れのあざやかさに驚いたのであった。鮎は、長良川と多摩川に限るように思っていたのに――鮎は、水温の高い川に育つと骨が硬くなるのである。先年、ある学者が、鮎の味は水温の高い川で漁れたものに限ると何かの本に書いたことがあるが、私はそれを読んで学者は学者らしいことを言うものだと、思ったのである。
冷たい水を好んで棲む魚は、どれも骨が柔らかである。山女魚も、岩魚も、鱒の子も。――骨を除いて食べるようでは、こうした魚の真の味を知る人とはいえないのである。最近知ったことであるが、榛名湖で釣れる公魚は本場の霞ヶ浦でとれるものよりも、骨が柔らかである。