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みずのしたのいし

水の下の石

山本 周五郎

「新武道」1944(昭和19)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,791 字 · 28 页

青空文庫

ような気持で、なお暫く返辞を待ったが、蓋を閉めた箱のように黙ってしまった小弥太のようすが、いつもとは違ってどこかしら底の知れない、弘がりのある重さをもっているように感じられ、ふと肩でも叩いてやりたい友情の衝動にかられた、それでかれは踵を返してそこを離れた。

午前二時と思える時刻にかれらは立ちあがった。雨雲は低く垂れさがって、昨夜とおなじように鼻さきも知れぬ闇だった、初更のじぶんから吹きだした西風はいつか南へまわり、いまにも雨を呼ぶのかしだいに強くなりつつあった。殆んど爪尖さぐりに濠端へたどり着いた六人は、焼け残っている三本の橋桁をたしかめ、二人ずつ三組にわかれて、ちょうど木登りでもするように両の手足で桁へとりついた、そうやって這い伝ってゆくより仕方がなかったのだ。……右の端の先頭は安倍大七で、小弥太がそのうしろにいた、橋桁の長さは三十間ある、昼のうち遠くから見ただけなので、果してどこまでたしかに焼け残っているかわからなかった、その不安を証拠だてるもののように、ほんの二三間もゆくと半分以上も燃えたあとにぶつかって胆を冷やした、「……脆い