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みずのしたのいし
水の下の石
山本 周五郎
「新武道」1944(昭和19)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,791 字 · 28 页
ように嗚咽のこえが起り、それが輪座した人々のうえに次ぎ次ぎと伝わっていった。
大七は立ちあがり、城壁の石へ身を投げかけて泣いた、かれは今はじめて小弥太の本当の姿をみるように思った、「あご」という綽名が無能の代名詞のように伝えられたのは、小弥太の表だけ見て心を知らなかったからである、大七は幼いときから功名を争い手柄を競った、十人がしらに挙げられたときは、部将になる日がすでに目前の事実としてみえ、満身の闘志に心が燃えるようだった、だがなんと小弥太の性根の違っていたことだろう、いつも人の後手をひくと考えたのは、かれが見えざるところで闘っていたからだ、水底の石に噛りついて死んだ、その死にざまは小弥太の平生のあらわれである、かれはつねにそういう闘いを闘って来た、ほかの者にはそれが見えなかっただけなのだ、――おれは耻じなければならぬ、大七は拳で石垣を打ちながらそう叫んだ。
そのとき追手のほうから、松明を持った兵がひとりの娘を案内して来た、「……こっちに加行小弥太という者がいるか」「……どうした」こちらからそう答えたが、小弥太と聞いたので、大七は急いで涙を拭きながらそっちへ寄っていった、「……加行がどうかしたか」