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こおりぐらのにかい
氷蔵の二階
宮本 百合子
「女性」1926(大正15)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,201 字 · 37 页
「結構よ、これで――でも、あなた親切なのね、有難う。……体どんな?」
「同じだわ」
「国へ帰んないの?」
房は苦笑した。
「だって――あなただって威張って帰れなけりゃいやでしょう」
志野は、強く否定した。
「私とは違うわ、あなたんとこなんかお金持じゃあないの、自分の好きでただ来てるんでしょう、だもん……」
「喧嘩して来たんだから、いや」
「頑固なひと!――あなたみたいにいつまでも学生みたいな人ありゃしないわ――そのままにしていたら、だって、悪くなるばっかりよ。死んじまってよ」
「お暇いただいて、呑気に養生するわ」
志野は、顔をしかめるようにして尋ねた。
「養生するって――どうするのあなた、今の家やめたら……困るでしょう」
「三月や四月遊ぶ位のことは出来るのよ」
二人は、それぎり黙って、房の土産のバナナを食べた。突然、志野が弾んで天井にぶつかりそうな調子で云った。
「いいことがあるわ! あなた、ここへ来るのいや?」
房は、とっさ、返事に窮した。
「そりゃ、家は随分穢いけど、呑気は呑気よ、なまじっか、素人家にいるよりよくてよ。室だってちゃんと一つ一つ区切れてるから。――私は、どうせ昼間一杯留守なんだから、あなたの好き自由だし――あなただっていきなり知りもしないところで間借りしたって、きっと淋しくって仕様がないに定ってるわ」