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こおりぐらのにかい

氷蔵の二階

宮本 百合子

「女性」1926(大正15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,201 字 · 37 页

青空文庫

それは、図星であった。房は、勝気だが神経質で、貸間の女主などが、勤めにも出ず、あまり金持とも見えない弱そうな自分をどんなに観察するか、それを想うと、実際躊躇していたのだ。

「それに第一、一人で暮すよりどんなにか経済よ」

志野は、打明けた、飾りない言葉で話した。

「私だって、まるで助かっちゃうわ――局の月給なんて、たった、あなた二十八円よ、室代を十四円とられて御覧なさい、やって行けたものじゃあなくてよ。だから、お裁縫なんかするんだけど――一日根からして働いて来て、また肩を凝らす程やって見たって、ね……若し、あなたさえいやでなかったら本当に来ない? 室代半分助かるわよ、お互に……」

房は、その晩は不決断のまま帰宅した。二三度、縫物を持って往来するうちに、次第に第一印象の暗さが薄らいで来た。却て便利らしい点が残った。須田の子供達にもなつき、ミシンの稽古をさせて貰っていた房は、一時の休養のために、まるきり暇をとりきるのは不本意であった。四五町の場所に室を持ち、気分でもよくなったら運動がてら、中の男の子を迎え位する――ゆとりと、変化も相当ある快い生活法ではあるまいか。