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こおりぐらのにかい
氷蔵の二階
宮本 百合子
「女性」1926(大正15)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,201 字 · 37 页
「信じるって――噂なの? あの人の云ったことみんな――あなたが変にかくしだてしたから、私却って何だか……」
「だって――云えないんですものそんなこと、恰好が悪くて。……あなた、憤っちゃった? もう私みたいな女と暮すのなんかいや?」
房は、いじらしいような、自分迄切ないような気持がした。
「そんなことありゃしなくってよ――謂わば、一つの不仕合みたいなものだったんじゃあないの」
「――あなたほんとにそう思っててくれる?」
志野は、感動で涙ぐんだ顔付になった。
「――あなたさえそう思ってくれれば、私全く有難いわ。――心配してたんですもの」
そして、見る者の心も動かす嬉しそうな笑顔で云った。
「ああ私さばさばしちゃった!」
対手の心持の判った安心と、何も隠すに及ばなくなった安心とで、志野は一時に当時の辛さを打ちあけ始めた。
「――実際あの気持――とても口で云えないわ。その男――今泉っての――お邸を出てから、私が悠くり寝ていられる二階を紅梅町へ借りたって云うんでしょ、私だって、まさか嘘だと思いやしないわ、わざわざ出かけて行って探したの探さないのって……いくら歩いて見たって、飯村なんて家ないから、やっと交番を見つけて訊くと、東か西かっての。