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けっとうじょう
決闘場
岡本 かの子
「ペン」1936(昭和11)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,298 字 · 23 页
近頃二人の男の間に挟まり、毎日続く焦慮にすっかり気持ちの制禦を失って居た彼女は、空元気さえもう長く張りつめて居られなかった。彼女は白磁のように自い気品のある顔の表面をなお更ら無理に緊くして二人の男に命令した。
――私の為めに決闘しなさい。
――ふふん。
ジョーンは苦笑した。さっきからこづき廻された気分がつかえて吐気がして来た。眩暈がしそうだ。が、アイリスは邪険に二人を両方へ押しやった。
――さあ、始めるんです。
――ピストルでやるんだ。
と言ったのはワルトンであった。彼は手真似のピストルを擬し、決闘の真似事でもすれば、気持や体をそう動かさず簡単に此の場が片附くと思いついたのだ。
男達は向き合った。右手を握り人差指だけを延ばしてピストルの形を造り、左腕を水平に曲げた上へ載せた。男達は合図をつまらなそうに待った。
――用意、――始め!
――ぱん。
二人は同時に口を弾いて怒鳴った。ワルトンは自分の左胸を両手で押えて、わざと芝生の上に倒れた。
――射たれた。
ワルトンは倒れると直ぐ少しおどけた風に細眼を開けてアイリスの機嫌を覗いた。
――は、は、は、は。