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きしゃははしる
汽車は走る
小川 未明
「日本の子供」1941(昭和16)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,849 字 · 8 页
ちがった新しい駅に、汽車が着くと、そこは入隊する兵士の見送りで、構内がにぎわっていました。白い上衣に国防婦人のたすきをかけた婦人たちがたくさん、かよ子の目に入りました。その中の、いちばんうしろに、立っている背の低い人が、またお母さんそっくりでありました。真っ白な足袋をはいて、手に小さな日の丸の旗を持って、笑いながら、じっとこちらを見ていました。見れば、見るほど、顔かたちからかっこうがお母さんそっくりです。
「お母さん。」と、かよ子は、もうすこしで呼ぼうとしました。
やがて汽車が動くと、そのお母さんも、いっしょうけんめいに旗を振っていました。
「万歳、万歳。」
かよ子の頭は、ぼんやりとしてしまいました。こうお父さんや、お母さんに似た人が、世の中にあるものだろうかと、不思議でならなかった。はじめて旅をして知ったのであるが、世間というところは、こんなに近しいものどうしの寄り集まりだろうか。そう考えると、急に悲しみでふさがっていた胸のうちが、だんだん明るくなりました。
汽車が、ある国民学校のそばを通過しました。広い運動場では、子供たちが、ボールを投げたり、なわ飛びをしたり、また滑り台に乗ったりして遊んでいました。