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さばくのこと

沙漠の古都

国枝 史郎

「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页

青空文庫

桟橋の上の人影が、揃って前へ手を突き出し、その黒い箱を受け取った。するとまたもや船の中から、ゾロゾロ人影が現われて桟橋の上へよじ登ったが、一個の箱を肩に支え、その箱をみんなで取り巻いて、神前へ捧げる御輿のように、敬虔な態度で歩いて行く。

「さあどうもこいつは解らない」

ラシイヌは胸へ腕を組んで、渋面を作って呟いた。それから楊柳の蔭を出て、御輿の後を追いかけたが、思い出して腕時計を眺めると、彼は追うのを中止した。

もう十分で八時である!

彼は御輿と腕時計とを代わる代わるに見比べてしばらくじっと考えていたが、決心がついたというように、グルリと体の方向を変え、大速力で走り出した。

公園へ向かって走るのである。

黄浦河とそして呉松江とが、相合流する一角に、居留地の公園は立っていた。北と東が水に臨み、西が英租界に向いている。水に向かった園内の芝の丘に、音楽堂は立っていた。眩くばかりの電燈が、楽堂の周囲に照り渡り、そこへ集まった聴衆のほくろさえ鮮かに見えるほどである。

十九

もう已に音楽は始まっていた。それは伊太利の音楽隊で、モールをちりばめた服装から指揮者の風姿から、かなり怪しげな一団であったが、「伊太利人」