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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页
護謨の林があるからには護謨園があるに相違ない。護謨園があるなら人間がいよう。その人間を探すことが何より急務だということになって、林の中を分けて行くとはたして護謨園の前へ出た。その時の嬉しさというものは思わず閧の声をあげたくらいだ。こんな事情で今日まで護謨園の主人に保護されて生活していたというものさ。聞けば護謨園とサンダカンとは、三十哩足らずの道程で自動車も通うということだったので、園の事務員にお願いして君の所へ昨日遅く電報を打ってやったんだが、こんなに早く来て貰ってみんなも心強く思うだろう」
ラシイヌはやおら立ち上がって、窓へ行って戸外を覗いたが、
「護謨林の様子を見るとか云ってさっきみんな戸外へ出て行ったが、そのうち帰って来るだろう」
こう云うと長椅子へ腰を下して前途の冒険を考えるかのように軽くその眼を閉じたのであった。
木小屋式の建物の内はしばらくの間静かであった。窓を通して真昼の陽が護謨林の頂きから射して来るのが室の板壁へ斑点を着けそこだけ黄金色に輝いている。聞いたこともないような南洋の鳥が林から広場へ飛んで来て、窓の方を横目で見やりながら透明の声で唄っているのが、室の中に寝ている病人達を慰めているようにも思われる。