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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页
それから小屋に別れを告げて縄梯子を伝って下りようとした。その縄梯子が見当らない。ほんの先刻まで掛かっていた棕櫚縄の梯子が見当らない。私は呆然と突っ立ったまま考えることさえ出来なかった。
「これはいったいどうしたんだ!」私は声を筒抜かせて無意味に室の中を見廻した。ほんとにこれはどうしたんだ! 棕櫚縄の梯子は私の足もとに手繰られて置かれてあるではないか! いったい誰が手繰ったんだろう? 云うまでもなく「恩人」だ! どういう意味で手繰ったんだろう?
「ほんとにどういう意味だろう?」
私はしばらく考えた。
私の胸へ光明が一筋しらしらと白んで来た。
「そうだ!」と私は膝を打った。「小屋に住めという謎なんだろう! 雑草を苅って径をつけてここまで私を導いて来て梯子を外ずしたというのだからこれより他に考えようはない……住めというなら住むことにしよう。住みよさそうな小屋でもあるし猛獣の害から遁がれることも出来る。的なしに林を彷徨うよりここにいた方がよさそうだ」
私はにわかに決心して室の掃除に取りかかった。それから自分で縄梯子を掛けて林の方へ枯草を採りに――それで寝床を拵えるつもりで――雑草を分けてはいって行った。