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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页
私はその時まあどんなに一摘みの塩を欲しく思ったろう! 塩を持たないこの私は果物を絞ってその液に浸してわずかに肉を食うのであった。
私の日々の生活はロビンソン・クルーソーそっくりであった。小屋で備忘録を認める。朝食として食べるものはバナナ三個に無花果に、椰子の果実を四分の一。昼までは私は腰かけたまま種々のことを考える。それから私は猟に行く、腰へ拳銃と弾丸帯をつけて手に土人用の弓を持って背中へ矢筒を背負った姿で林の中へ行くのであった。私は猟をしながらも例の「眼に見えぬ恩人」を探し出そうと苦心した。そして私はその恩人がどんな所に住んでいるか、彼の住んでいる土人部落を発見したいものだと思いながら林中を縦横に歩くのであった。半日林中を狩りくらして陽のあるうちに小屋に帰って夕飯の仕度にかかるのであった。夜は獣油に燈心を浸して乏しい光をそれで取った。
燈火は点けても心を慰める書物一冊手もとにはない! この寂しさは何んと云おう! 寂しいと云えば万事万端寂しくないものは一つもない。林を渡る嵐の音、丘で嘯く豹の声、藪で唸っている狐の声。……
ある夜銃眼から覗いて見ると一匹の豹が小屋の扉を一生懸命で掻いている。