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さばくのびき
沙漠の美姫
国枝 史郎
「サンデー毎日」1928(昭和3)年4月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,658 字 · 14 页
頤髯が長く腹まで垂れて、それが沙漠の風に吹かれて、仏子のように飜った。
単于の頤髯を吹き飜した風は、漢庭の宮女の服装を着ている、王昭君の裾をも飜した。私は時々横眼を使って、裾から兎もすれば洩れようとするところの琅のような王昭君の脛を盗み見ようと心掛たが、仲々成功しなかった。柘榴の花弁を思わせるような深紅の襪を焔のように纏った、足首を見るが精々であった。それだけでも私は有頂天になって、うっかり握っていた馬の手綱を放して、両手を機嫌よく揉んだりした。
だが時々王昭君は、私へ向って色眼を投げた。すると私は真ッ赤になって、心臓をドキドキ躍らせて、少し気障ではあったけれど、背広の襟をしごいたりした。と、王昭君は軽蔑するように、今度は不愛想に、唇を噛んで、真正面に顔を向けた。
で、私は絶望してテレて、カフス・ボタンを爪探った。
しかし私と王昭君とは、本来仲がよかったので、いろいろのことを話し合った。
「画家の毛延寿を利用したのよ。沢山お金をやりましてね」
「という意味はどういう意味なのです」
「わざと醜婦に描かせたのよ」
「あああなたの絵姿をね」
「ええそうよ、わたしの絵姿をね」