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かわみずのはなし
河水の話
小川 未明
「早稲田文学」1924(大正13)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,668 字 · 8 页
」
バナナは、独りごとをしながら、追懐にふけっていました。
河水は、その言葉をきいていました。そして、それに同情をしてか、また、あざけるのか、わからないような、ささやかな笑い声をたてたのであります。
「いくら眠るからといって、そんなによくも眠れたものだ。俺たちは、まだ、十分間と一ところにじっとして、眠った覚えがない。」と、河水は、いいました。
「南の熱い、森の中に咲いている花や、また、木の葉は、それは、じっとしてよく眠ります。なかには、あまり眠りすぎて、しぜんに溶けてしまうものもあります。」と、バナナは、答えました。
それから、バナナは、河水について、流れてゆきました。すると、突然、そこへ一本のつえが落ちてきました。
「ああ、やっと、私は、盲人の手から、脱け出てきた。一刻も、休みなく、堅い石の上や土の面を、こつこつやられたのでは、私の身がたまったものでないからな。」と、つえは、独り言のようにいいました。
「おまえさんは、どこから、どうして、ここへきたのです。」と、河水は、問うたのです。
つえは、長い体を、水の上で、ぐるぐると振りながら、
「按摩に、長いこと、私は、つかわれていたのです。