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うたかたのき
泡沫の記
久生 十蘭
(ルウドイヒ二世と人工楽園)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,889 字 · 26 页
剖見の発表はまだ読んでいないが、あの連中だって、馬鹿ばかりではないから、たぶん、うまくやってのけたこったろう。それで君におねがいするのだが、菩提樹宮の王の夜の部屋へ行って、最初に眼についたものを、なにも考えずに焼いてもらいたい。自分で行けるなら、もちろん行ってやるが、もう代替りで、わしのようなものをやすやすと参入させまいから、それで君にたのむのだ。君ほどの齢になれば、物事の重さ軽さぐらいのことは、理解できるはずだから、あらためて、とやかくと指図はしないが、君自身の気持に、なにか感じられることがあったら、それに従って行動してくれるといい」
そういうと、名も告げずに飄然と帰って行った。
レルーク「L城の人工楽園」
「見あげるような高い岩山の上に、童話の城のようなL城がそそり立っていた。その上に暮れたばかりの水々しい空があった。
深夜の二時、王が窓掛をおろした馬車に乗って、交通遮断をした村道を駆けぬけ、この岩山の下で、騾馬に曳かせた小馬車に乗りかえ、「王の道」といっている嶮しい岩阻道を上り、目のまわるような高いところに建っている城で、毎夜、千滴のローダノム(阿片丁幾)を飲み、カントや、フィヒテやシェリングの著書を読んで、独逸形而上学の勉強をしているという、伝説まで出来ているその城であった。