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りゅうせんスパイ
流線間諜
海野 十三
「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页
そこで彼は低い声で、何事かを早口に喋った。それを聞くと赤毛は肯いた。そしてゴロンとその場に倒れてしまった。
やがて送風機の音が止った。そして正面の鉄扉が弾かれたようにパッと開くと、まるで開帳された厨子の中の仏さまのように、覆面の首領が突っ立っていた。その手にはコルトらしいピストルを握って……。
「さあ帆村君。動きたければ動いてみたまえ。ナニ動きたくないって。そうだろう。直ぐピストルの弾丸を御馳走するからネ。――さて、それよりも君に至急聞きたいことがあるのだから、答えて呉れたまえ」
といって首領はジリジリと帆村の方に近づいて来た。覆面対覆面――それは首領対帆村の呼吸づまるような一大光景だった。
「帆村君」と首領はなおも油断なくピストルの口金を帆村の胸にピタリと当てて「君は銀座事件でマッチ函を怪しいと睨んでいるそうだが、一体あのマッチ函のどこが怪しいというのかネ」
「……」帆村は暫く黙っていたが「函は普通のマッチ函ですこしも怪しくはない。怪しいのはマッチの棒だ」
「マッチの棒? それがなぜ怪しい」
「函の中に半分くらいしか残っていなかった。その癖、擦った痕が一つもない……」