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りゅうせんスパイ

流線間諜

海野 十三

「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页

青空文庫

それは合わせるために一方が内側へ少し折れこんでいて、その周囲にリベットが打ってあった。――そいつが足掛りになりはしないか。彼は靴を脱ぎ靴下を取って、跣足になった。そして靴下は、ポケットへ、靴は腰にぶら下げると、壁に高く手を伸ばして、そこらを探ると、幸いに指先に手がかりがあった。そこで十の爪に全身の重量を預けて、器械体操の要領でジワジワと身体を腕の力で引上げた。俄に強い自信が湧いてくるのを感じた。

全てが忍耐の結晶だった。

「ウーン、ウーン」

彼は功を急がなかった。ユルリユルリと鉄の管壁を攀じのぼっていった。だから、到頭二十メートルもある高所に登りついた。――そして、彼の頭はゴツンと硬い天井を突きあげたのだった。

「ああ、また行き停りか」

彼は失望のために気が遠くなりそうになりかけて、ハッと気がついた。こんなところで元気を落してはなるものかと唇をグッと噛み、右手をあげて天井を撫でまわした。すると指先にザラザラした粗い鉄格子が触れた。空気がその格子から抜けているのだった。

鉄格子ならば、これは後から嵌めたものに違いない。これは下から突くと明くのが普通だと思ったので、帆村は腕に力を籠めてグッと押しあげてみた。