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りゅうせんスパイ
流線間諜
海野 十三
「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页
大佐どの、貴官にはそこに異状のあることがお分りになっているのですね」
「まあ、それは説明しまい。その代り君に見せてやるものがある。こっちへ来給え……」
大佐は帆村をうながして、或る部屋へ引張っていった。そこの壁には、或る海峡らしい空中写真が沢山貼りつけられてあり、それには一枚一枚日附が記されてあった。
「この左の岬が、ラザレフ岬だ。この右の山蔭に見えるところがボゴビだ。さあ、日附を追って、この海峡の水面にいかなる変化が起っているかそれを見たまえ」
「なんですって? これが問題の両地点の写真なのですか。どうしてこんな写真を撮すことが出来たのです」
「そんなことは訳はない。空中から赤外線写真を撮ればいいのだ。わが領土内にいてもこれ位のことは見えるのだ」
帆村は赤外線写真の偉力に愕きつつも、日附を追って海面の変化を辿っていったが、
「ああ、これは……」
と思わず大声で叫んだ。帆村は一体そこに何を見たのであろう?
赤外線写真
その赤外線写真が、問題のボゴビ町とラザレフ岬とを一緒に撮ったものだと聞くだに胸が躍るのに、しかも壁一杯に貼りつけられた沢山の写真は毎日毎日撮影されたもので、いかなる変化がそこに起りつつあるかということを示しているものだと聞いては、物に動じない帆村探偵とても顔色を変えないではいられなかった。