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りゅうせんスパイ
流線間諜
海野 十三
「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页
怪紳士
「どうも僕には、事件に関係のない極く普通の燐寸としか考えられないがね」と大江山捜査課長は首を振って「ねえ雁金さん。そうじゃありませんか」と、事件を主査している雁金検事の同意を求めた。
「さあ、どっちかな」と検事はこっちへ寄ってきながら、「これはまたいつもの御両所の水かけ論になりそうだネ。議論は一寸お預けとしてマッチの秘密がとけてからのことにすればいいじゃないか」
検事はいつも、大江山課長と帆村探偵の意見の対立で、散々手を焼いていたので、巧みに逃げた。
「そうでしょうが、この帆村は非常に重大視します」と帆村はいつになくハッキリと意志を現して云った。「燐寸というものが極く普通のものだけにこれを利用した疑問の人物を唯者でないと睨みます」
「しかし利用したかどうかはまだ分らない。なにしろ燐寸は一度も擦った痕がない位だからな」
「いや立派に利用していますよ。擦ってないから可笑しいのです。擦ってあるんだったら軸木が半分なくなっても別に不思議もないのです」
「それほど不思議なら、燐寸の箱を壊してよく調べてみたらどうだネ」と検事は云った。
「ねえ大江山君。その燐寸をバッグから出して帆村君に委せてもいいだろう」