轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あさまふんかこう
浅間噴火口
豊島 与志雄
「文芸春秋」1938(昭和13)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,938 字 · 24 页
それでも正枝はまだ不安心で、其後特高係がまたやって来た時、そっと李のことを尋ねてみると、なかなか勉強家で有望な青年らしい、との返事だった。客と李とは笑い声など立てて親しげな様子だった。
室の中の有様を、正枝はひとわたり見検べたきりで、何物にも手を触れはしなかった。だが、柱に下ってる短い竹筒だけは、訝しげに取上げてみた。それは尺八だった。竹の肌艶といい根節の恰好といい、素人目にも美事な尺八で、紫の緒の組紐で上の方を結え、柱の釘にぶら下げてある。
「ま、尺八だよ。吹けるのかしら……飾りのつもりかしら……。」
キヨが何の反応も見せなかったので、正枝は尺八を元に戻し、なお室の中を一通り見廻して、それから出ていった。
結局、発見は尺八一つきりで、彼の出奔或は失踪については何の手掛りも得られなかった。外泊の場合は予告するか夜遅くとも電話でもするという春日荘の立前は、彼も充分に知っていながら、もう無音のまま、三日にもなる。いつもの通りぶらりと外出したきりで、室の有様も平素の通りだとキヨは云うし、また、近頃なにか変った様子も見えなかったのである。
「だけど、もとからちょっと変な人ではあった。