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あさまふんかこう

浅間噴火口

豊島 与志雄

「文芸春秋」1938(昭和13)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,938 字 · 24 页

青空文庫

と呼んで何でも相談するし、正枝もいろいろ面倒をみてやった。

余寒のきびしい初春の頃、淡く雪がきた日の夜遅く、二時頃、李はひどく酔っ払って帰ってきた。正枝も女中たちも寝ていた。けたたましく鳴り渡る呼鈴に、うとうとしていた正枝はすぐに起き上り、玄関の方へやってゆくうちに、外の者が李であることを感ずいた。

呼鈴のあとで暫くひっそりとなって、今度は戸が激しく叩かれ「おばさん、おばさん」という声まで聞えた。それからまた静まり返った。

正枝は玄関にじっと立っていたが、外の静けさがあまり続き、急に寒気に身震いして、そっと戸を開いてみた。薄曇りのぼーっとした月明りで、露地の中の電灯線を中途で支えた小さな柱に、人影がしがみついてふらりふらり揺れていた。

「誰です、誰ですか。酔っ払って、こんなに遅く……。」

それでも返事はなく、柱にしがみついた人影は、やはりふらりふらり揺れていた。

「酔っ払った人は、一時すぎには家へ入れませんよ。一時までは許してあげます。一時すぎたら、自働電話でことわって、酔いがさめてから、翌朝帰っていらっしゃい。何度も云っておいたでしょう。その通りになさい。