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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

風がつのってきたらしく、波頭が白く光る。それがわが潜水艦ホ型十三号の艦橋に立つ当直下士官の眼にも、はっきりわかった。

艦は今、鯨のような体を半ば波間に現し、針路を西南西にとって、全速力で航行中だった。舳を咬む波が、白い歯をむきだしたまま、艦橋にまで躍りあがってくる。

当直下士官は、すっかり雨合羽に全身をつつみ、胴中を鉄索にしばりつけて、すっくと立っている。

頭巾の廂からぽたぽたと潮のしずくが垂れる。すると風が下からどっと吹きあげ、霧のようになって顔をうつ。それでも、いささかもひるむ気色なく、墨をながしたような前方の深い闇を、じっとにらんでいる。

そのうちに風は雨を含んでますますつのり、舳を越えてどどっと崩れかかる波浪はますますたけりくるう。艦体は、前に後に、左に右にとゆれながら、海面を縫って難航を続けた。

しばらくして、ジジジ……と電話のベルが鳴った。

下士官は右手をのばして電話機をとりあげた。

「はあ、艦橋当直」

「こっちは艦長だ。どうだ入野一等兵曹、あと三十浬で飛行島にぶつかる筈だが、西南西にあたって、なにか光は見えぬか」

「はい、なにも見えません。