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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

飛行島付近は、風は強く雲は早かったが、雨はすこしも降っていなかったのである。

「考えてみると、あいつはどうも、変な野郎だぜ」

といっているところへ、ゴルドン兵曹のはいって行った奥の方から、ぱんぱんぱんと、銃声が聞えた。

「あっ、――」

と、いいざま電灯をその方へ向けた途端に、ひゅーっと唸を生じてとんできた銃丸が、電灯に命中した。がちゃんという響。と同時に番兵はあっといってその場へひっくりかえった。そこへ奥から駈けてきた何者ともしれぬ人物が、番兵の頭をとびこえて、風のように立ち去ってしまった。

「な、なにごとじゃ」

と、もう一人の番兵が、暗闇の中でわめいた。

それに少し遅れて、奥の方からどやどやとびだしてきた手提電灯のいくつ。

「おい、雨合羽を着た男がこっちへ逃げたのだろう」

番兵は眼をぱちくりさせながらいった。

「ええ、今一人誰か出てゆきました。なに、あれは曲者ですか。でも、ゴルドン兵曹だといっていましたよ、飛行班の……」

「ばか、何をいっちょる。ゴルドンなんて兵曹が飛行島のどこにいる。あいつのために危く無線機械をこわされるところだった。いや、こっちが気がつかなければ、その前に俺たちは皆、ぱんぱんぱんとやられちまうところだった」