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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
油を流して火をつけたことは、飛行島の人々をさわがせた。しかし人さわがせのためだけではなかったとは、後になってはじめて分かった。
それにしても川上機関大尉はあの夜監視隊員に追跡された時、どうして危難をまぬかれたのだろう。そして、どうして、又いつのまに、似てもつかぬ半裸体の中国人と入れ替ったのだろう。
それは一応不思議に思えるが、実はなんでもないことだったのだ。諸君は彼が監視隊に追いつめられ、やむなく中甲板の高い塀を越して舷に出たとき、そこに寝ていた半裸体の中国人労働者があわてて起きあがったことを覚えているだろう。彼の労働者は暑くるしい夜をそこに寝ころんで涼んでいたのだ。そこへ川上機関大尉が頭の上から降ってきたのでびっくりして、立ちあがったのだ。その拍子に足をふみはずして海中に墜ちていったのが運のつきであった。下の暗い海面にドボーンという水音を聞いた川上機関大尉は、とっさに身をひるがえして、傍に積みあげてある鉄材のかげにかくれたのである。
とは知らぬ監視隊員は、泡立つ水面の中心に向かって機関銃を乱射した。彼の中国人労働者は哀れにも川上機関大尉の身替となってあえない最期を遂げたのである。