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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
「おや、そんなことがありましたか。そのゼリー中尉が、真先にぶっ倒れたのですが、御存じでしょうな」
「いや、知らない。その報告も受けていない」と、フランク大尉はつよくかぶりをふった。
「俺は、試験部へ行って、リット少将閣下が命令せられたものを集めるのに夢中になっていた。ところがその仕様書はすぐ集ったが、試験表の方がなかなか揃わない。それに手間どって、試験部の責任者を呶鳴りつけたりしているうちに、時間はどんどん廻って、二三十分かかってしまった」
「では、大尉は、ずっと試験部におられたのですね」
ケント兵曹は、やっと話がのみこめたという風だった。
「そうだ。試験部の、机の引出をみな引き出して、やっと試験表を三十通までみつけたが、あとの六通が見あたらない。あまり遅れてもと思って、足りないままで、副官の前へ持って出たがとたんに大恥をかいた?」
「大恥とは何です?」
「うむ。副官はそんな電話をかけてそんな命令を出した覚がないといわれるのだ」
「そりゃ、変ですね」
「変だ。まったく変だ。とにかく副官に笑われて、ここへかえってきたのだ。重大な試運転の真最中に、誰か副官の声色をつかって、俺を一ぱいくわせたのかとむかっ腹をたててここへ帰ってくると、ほら、そこにいる怪しい東洋人が眼にうつったではないか」