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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

彼の重任は、紙を一枚一枚めくりとるように、軽くなってくるのであった。このかたい護衛の網を破って、うかがい寄る曲者があろうとはどうしても思えなかったからである。

「閣下、また祝電がまいりました」

「ほう、すこし気が早すぎるようだが、こんどは誰からか」

「警備艦隊司令官からです」

「おおそうか。いよいよほんとうに、試運転は無事終了らしい。これは思いがけない幸運だった。外国のスパイ艦艇は一隻も近よらなかったし、これでわしは、世界中の眼をうまく騙しおおせたというわけかな。あっはっはっ」

リット少将は、心から、安堵の色をみせるようになった。

「では、艦内検閲点呼を命令せい。これで試運転は無事終了ということにしよう。警備隊の方へも、同様にしらせるがいい」

「はい、かしこまりました。全艦および警備隊に、検閲点呼を命じます」

副官は、通信班に通ずる伝声管のところへかけつけた。

号令は、全艦隊にひろがった。

全速力航進のもとにおける検閲点呼は、もっとも重大な意味があった。乗組員なり機関なりが、どんな工合にはたらいているかが、もっとも明らかに知れるのである。

この検閲点呼がすむと、飛行島をはじめ全警備隊は、速力をゆるめ、方向を百八十度転じて、夜明までに元の位置にかえることになっていた。