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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
大辻は、ふだんから赤い顔を一層赤くしながら、いまにも泣き出しそうである。
「わ、私がしゃべらないといけませんか」
「あたりまえだ」
長谷部大尉は一喝した。
「杉田の脱艦について要領よく、ありのままにしゃべれ、村の鎮守さまの方は、あとから俺があやまってやる」
「うへっ、――」と大辻は眼を白黒させ、
「――では申し上げますが、杉田はいま申しましたとおり、午前十時二十分、艦側から海中にとびこんだのであります」
「ふむ――それから」
「杉田は水中深くもぐりこみました。彼はもと鮑とりを業としていたので、なかなかうまいのであります。かれこれ三分ほどももぐっていたでありましょうか、やがて彼はしずかに海面に顔だけを出して、泳ぎだしました」
「ばかに話がくわしいが、一体それはどうして分かった」
「それは――それはつまり見張人が見張っていたのであります」
「なに、見張人? 誰がそんな脱艦を見張っていたのか。――ははあ、貴様だな」
長谷部大尉は、かっと両眼をむいて大辻を睨みつけた。
「……」
大辻はそれに対して返事ができなかった。ただ両眼から、豆のような大粒の涙を、ぽろんぽろんと落しはじめた。