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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
もう夜はかなりふけていて、さっき午後十一時の時鐘が鳴りひびいた。
非番の水兵たちは、梁につりわたしたハンモックの中に、ぐっすり眠っていた。
ただ機関だけが、ごとんごとんと絶間なく力強い音をたてている。
明後日、香港につくまでは、こうして機関は鳴りつづけているだろう。
が、二番艦明石の艦長室では、加賀大佐が、きちんと机に向かっていられた。
机上には、十枚ばかりの同じ形の紙片が積みかさねてあった。艦長はその一番上の一枚に見入っているのだった。
「ふーむ、――」
軽い吐息が、洩れた。
一たい艦長は、なにを考えているのだろう。
そのとき入口の扉がこつこつと鳴った。
「おう」
やがて扉が開いた。
扉の外に直立不動の姿勢で立っていたのは第三分隊長長谷部大尉だった。
「さっきお電話で、私の願をお聞きいれ下すってありがとうごさいました。そこで早速伺いましたが……入ってもお差支えありませんか」
と、長谷部大尉はすこし間のわるそうな顔をしている。
というのは、さっき大尉は、艦長へこんな風に電話をしたのであった。
(艦長、お寝みになっていませんければ、御迷惑でもしばらく私の相手になってくださいませんか)