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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
「おお川上が帰ってきた」
長谷部大尉はそれを見ると、にこりと笑ってその方へ足早に歩いていった。
「おい川上。いま貴様を訪ねていったところだ」
「よお、長谷部か。はっはっはっ、もう酒はないぞ」
「酒はもうのまんことにきめた。おや、貴様は一杯機嫌だな。朝から酒とは、どうも不埒千万、けしからんじゃないか」
「はっはっはっ。ここへもう出とるか」と川上機関大尉は、自分の頬を指さした。昨日とはちがって、みちがえるように朗らかだった。
「司令官をお訪ねしたら、『一盞やれ』と尊い葡萄酒を下されたんだ」
と心持形をあらため、あとは、
「いい味だったよ。はっはっはっ」
と笑にまぎらせる。
「おい、川上。司令官のところでは、なにかいい話でもあったのか。あったら俺にも聞かせろ」
「いや、それは何でもないことなんだ。隠すわけじゃないが、悪く思うな。司令官と雑談のときに貴様の話も出たぞ。閣下は貴様を信頼していられる。長谷部のことは心配いらぬ。といっていられた。彼は沈黙の鋼の塊みたいな男だ。川上――というと俺のことだが、川上とはまるで違った種類の男だ。彼が健在であることは帝国海軍にとっても喜ばしいことだなどと、大いに聞かされちまった」