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うみぼたる
海ぼたる
小川 未明
「赤い鳥」1923(大正12)年8月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,403 字 · 7 页
娘は、西にそびえる高い山を仰ぎました。そして、明け暮れ、なつかしい故郷が慕われたのです。三年たてば、恋しい母や父が、やってくるといったけれど、彼女はどうしても、その日まで待つことはできませんでした。
「どうかして、生まれた家へ帰りたいもんだ。」と、彼女は思いました。
しかし、道は、遠く、ひとり歩いたのでは、方角すらも、よくわからないのであります。彼女はただわずかに、川に添うて歩いてきたことを思い出しました。どうかして、川ばたに出て、それについてゆこう。その後は、野にねたり、里に憩うたりして、路を聞きながらいったら、いつか故郷に帰れないこともあるまいと思いました。
ある日、娘は、聟や、家の人たちに、気づかれないように、ひそかに居間から抜け出たのであります。
川の流れているところまで、やっと落ちのびました。それから、その川について、だんだんと上ってゆきました。女の足で、道は、はかどりませんでした。草を分け、木の下をくぐったりして歩きました。いまにも、彼女は、追っ手のものがきはしないかと、心は急きました。どうかして、はやく、川をあちらへ渡って越したいものだと思いました。