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かいりゅう
海流
宮本 百合子
「文芸春秋」1937(昭和12)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,977 字 · 72 页
私の勝手じゃないの、行ったって行かなくったって」
初めは哀願するように、しまいには憤ったように飾りっ気のないふくれた調子で云っている。秋田訛のある杉登誉子の声であった。
「ですけれどね、きのうイー・エス・エスのときミス・ソーヤーがあなたのことをわざわざきいていらっしゃったんですもの。何故この頃礼拝に来なくなったのかって――私仕方がないから、アイ・ドント・ノウって云ったわ。そしたらミス・ソーヤーは、シイ・イズ・ア・ナイスガアルっておっしゃったんですもの……行きましょうよ!」
困ったように杉は黙りこんでいたが、
「あたし、ちっともナイスガアルなんかじゃないわ」
内気な中に譲歩しない口調で、やっぱり秋田訛を響かせてねばっている。宏子は、枕の上に片肱ついて半身起き上りながら、この不器用でいて、しかもこういう学校生活の間では相当な意味をもっている問答に聞耳を立てた。杉が断り切れるか、どうか心配のようでもあった。杉は地方のミッション・スクウルからの習慣でずっと礼拝に出ていたのだが、三週間ばかり前からそれをやめた。戦旗の読者になったばかりなのであった。
礼拝に行くことをすすめているのは、宏子たちの級の幹事をやっていて英語会話会員の飯田満子の声であった。