轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かいりゅう
海流
宮本 百合子
「文芸春秋」1937(昭和12)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,977 字 · 72 页
宏子は、次の日から時間をきめて本をよんでいたのをやめ、休暇が終る前の日、寮へかえってしまった。
温室の中で、三脚にかけて風の音をきいている順二郎の心に、憤ったようにして自分を見つめていた姉の顔が泛んだ。それと重り合うようにして、小田だの、山瀬、桂という同級の連中の嘲弄的な声や目や肩つきが泛んだ。上唇に薄すり柔毛のかげがある順二郎の丸い顔は心持蒼ざめた。四日ばかり前、昼休みの丁度前学生集会所へ撒かれた。順二郎も拾った。読み始めていたところへ、
「拾ったものは、こっちへ出したまえ! 持ってちゃいかん。出した、出した!」
あんぺと渾名のある体操教師が怒鳴りながら駆けつけて来た。
「おい、出した!」
順二郎は、素直に手にもっていたものをあんぺに渡した。傍にいてそれを見ていた小田が、腰につけている手拭をやけにパッとぬきながら、
「おい加賀山、君の公明正大論もいいかげんにしろよ」
いかにも軽蔑したように云った。きちんと制服に靴をつけ、手拭を腰に下げる趣味も持っていない順二郎は、態度は崩さぬながら顔を赧くした。まわりにいた学生たちも持っていた筈だったのに、あんぺに渡したのは順二郎一人なのであった。