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きえたミジアム

消えた霊媒女

大倉 燁子

「オール讀物 四巻一一号」文芸春秋、1934(昭和9)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,605 字 · 31 页

青空文庫

あそこへ行きさえすればいつでも妻に逢えるという新しい希望に一切を忘れて、幾分朗かな気分になっていたのです、それで家へ帰ってからも、今日の不思議な出来事が、絶えず頭の中で往来していました。書斎にいてじっと目を閉じると、美しい霊媒女の顔が私の目に焼きつくように残っていました。その翌日もまた出かけました。

その翌日も、その次ぎの日も、私は毎日霊媒所へ通いました。

『度々お招きして霊を慰めて上げますと早く浄化なさいます。霊のために大変結構なことでございます』

と云われるので、自分も喜び、霊も慰められる。こんな有難いことはないと思ったのです。そうして通いつづけているうちに妻を失った寂しさも段々と薄らいで行くかと思いました。

私の日課は毎日霊媒所へ通うことでした。外へ出るのはそこへ行くだけで、あとは書斎にいて何人にも面会しませんでした。

今までは夢想だもしなかったこの不思議な楽しみに入り浸っているのは、私にとっては大きな喜びでしたが、これは他人には決して語りませんでした。もし人がこれを聞いたら何というでしょう。勝田は気が狂ったのだと、いい笑話を提供するだけでしょう。