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せいぞうとぬま
清造と沼
宮島 資夫
「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年1月号
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,864 字 · 12 页
「ふふん、それでおまえは東京に出て来て、どこにも頼る人はないのか。」
と、最後に聞かれたとき、
「だれもねえだ。」
と、清造は答えました。そのとき、かれの頭には、けさがた通った町の店の人たちが、せわしそうに働くだけで、自分なんかには目もくれなかったことをふと思い出しました。
「東京って、そんな生やさしいとこじゃないよ。みんなぶっ倒しっこをして暮しているんだ。しかし、おまえみたいに帰る家もなくっちゃ困っちまう。しかたがない、わしの家も当分はまだせわしいから手伝っていな。そのうち、どこか小僧にでもいったらいいだろう。」
おやじさんは親切にいってくれました。
三
清造はその日から、小さな凧屋の小僧になりました。おやじさんは親切ないい人でした。夜になって夜なべ仕事などをしているときには、いろいろ昔のおもしろい話などを聞かせてくれました。そうして、町の中に、こんなに電信柱やなにかが立たなかった時分には、東京でも、どんなに大きな凧を上げたかを話したりして、
「しかしもう、これから凧屋はだめだ。おまえなんかも、なにかいい好きなことを考えた方がいいよ。」
といいました。