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おんせんへでかけたすずめ

温泉へ出かけたすずめ

小川 未明

「赤い鳥」1928(昭和3)年3月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,988 字 · 10 页

青空文庫

しかし、そこは、もはや雪が深くて、湯船は、半分ほども、雪に埋まっていました。それですから、あたりには彼らが食べるような餌が、いくら探しても、落ちているわけはなかったのでした。

「さあ、困ってしまった。どうしたらいいだろう……。」と、北国のすずめは、ため息をもらしました。

「私は、どうしましょう。体は痛むし、そのうえ、腹が空いて苦しくてしかたがない。」と、けがしたすずめは、泣き声を出して訴えていたのです。

このまま帰ったら、自分が、うそをついたといって、みんなはなんというかしれない。困ったことになったと、案内したすずめは思いました。

「私が、なにか食べるものを探してきます。」といって、彼は、ひとり飛んで、餌のありそうな里をさして、出かけたのでした。そして、疲れて、山の頂に休んでいると、空遠く、がんの一群れが、羽音を刻んで、海の方をさしていくのが見られたのでした。このとき、すずめは、自分の故郷を思い出したばかりでありません。しみじみと、自分たちのみじめな生活にくらべて、つねに、だれにすがるということなく、自らの力で、海や、湖や、河を漁り、南から北へ、北から南へと渡って、雄々しく生活する、これらの鳥をうらやましく尊く感ぜずにはいられなかったのであります。